離婚後もDV加害者からの連絡や突然の訪問が続き、「ようやく別れたのに心が休まらない」という悩みは後を絶ちません。特に子どもがいる場合や、住居・勤務先が知られている場合は深刻な被害に発展することもあります。本記事では、離婚後のDV被害を防ぐための具体的な方法、接近禁止命令・住居秘匿措置などの法的制度、警察や相談窓口の利用方法、さらに安心して生活するための日常的な対策について詳しく解説します。自分や家族の安全を守るために、知っておきたい知識をまとめました。
- DV加害者からの連絡・訪問を法的に防ぐには?
- 接近禁止命令・保護命令の取得方法
- 警察・自治体・支援機関の利用法
- DV被害者支援措置の内容と申請方法
- 生活上でできる防犯対策と心のケア
離婚後も続くDV加害者からの接触被害とは?安心を脅かす実態
「もう別れたのに…」加害者からの執着が残るケースは多い
離婚によって法的な関係は解消されたとしても、DV加害者の中にはなおも執着を続けるケースが少なくありません。特に加害者が精神的支配や威圧を手放せず、元配偶者の行動を監視しようとしたり、連絡を取り続けたりすることがあります。電話やSNS、メールでのメッセージ送信、プレゼントの送付、訪問など、直接的な暴力がなくても「意図的な接触」が続くことで、被害者の精神的負担は大きくなります。「もう関係が終わった」という認識が加害者にない場合、予想以上に長期間続くおそれがあるため、早めに対策をとることが重要です。
接触が「暴力」ではなくても、立派なDVに該当することがある
DVというと身体的暴力を連想しがちですが、実際には精神的・社会的・経済的なものも含まれます。離婚後も加害者がしつこく連絡を取ろうとしたり、無言電話やLINEの既読確認を繰り返したり、職場や住居近辺での張り込みなどの行為が続けば、それは「精神的暴力」として明確なDVに該当します。被害者にとっては、「また何かされるのではないか」という不安が日常に影を落とす状態になり、生活や仕事に大きな支障を及ぼすことも少なくありません。身体的な攻撃がないからといって、我慢する必要はないのです。
身近な人に相談しづらい「離婚後のDV被害」の特性
離婚後のDV被害は、周囲に「もう別れたんだから大丈夫でしょう」と誤解されやすいという問題があります。そのため、被害者自身も「大げさに思われたくない」「また迷惑をかけたくない」と感じ、身近な人に相談できずに一人で抱え込んでしまうケースが多く見られます。しかし、加害者の接触が続く限り、心身の回復も生活の安定も得られにくくなります。まずは「この状況は異常である」と自覚し、自分の安心を優先する姿勢が大切です。相談先は家族だけでなく、自治体や支援機関など、専門の窓口を活用するのも有効な一歩となります。
接近禁止命令や保護命令の法的制度を知る
DV防止法に基づく保護命令とは?身を守るための緊急措置
DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)では、配偶者または元配偶者からの暴力や脅迫行為を受けた場合、裁判所を通じて「保護命令」を申し立てることができます。保護命令には「接近禁止命令」「住居等への侵入禁止命令」など複数の種類があり、被害者の身の安全を守ることを目的としています。命令が出されれば、加害者は一定期間、被害者やその家族に接近したり連絡を取ることが禁止され、違反した場合には刑事罰が科される可能性もあります。離婚後であっても、被害が継続していれば申立ては可能です。
接近禁止命令の内容と効力を正しく理解することが重要
接近禁止命令は、加害者が被害者の住居、勤務先、学校などに接近することを禁じるもので、主に6か月間有効です。また、電話やメール、SNSなどを通じた連絡も禁止されます。ただし、裁判所が命令を出すためには、被害状況の証拠や事情説明が必要となるため、警察への相談や支援センターの協力が前提となることが一般的です。命令は一時的な措置に過ぎないため、継続的な支援を受けながら、根本的な安全確保の準備を並行して進めることが求められます。
命令の対象になる主な行為とは?申立て前に知っておくべきこと
保護命令の対象になる加害者の行動は、以下のようなものが挙げられます。
- 繰り返される訪問・電話・メールなどの接触行為
- 自宅や勤務先での待ち伏せ・押しかけ
- 子どもへの接触・監視行動
- 被害者に対する脅迫的発言や威嚇
- 被害者の周囲の人間に対する嫌がらせ
これらの行為が確認できる場合は、速やかに警察または配偶者暴力相談支援センターに相談し、証拠の確保とともに法的措置の準備を進めることが重要です。緊急性が高い場合は、仮処分として迅速に対応されるケースもあります。
DV被害者支援措置と「住民票秘匿」の手続き
住民基本台帳の閲覧制限制度で住所を守る
DV被害者が新たな生活を始めるうえで特に不安となるのが、「住所が加害者に知られてしまうのではないか」という問題です。日本では、原則として住民票の写しや戸籍の附票は第三者が請求することが可能ですが、DV被害者に対してはこれを制限する「住民基本台帳閲覧制限制度」が設けられています。この制度に申請し認められれば、加害者が役所に住民票を請求しても交付が制限され、新住所の秘匿が可能になります。新たなスタートを安全に切るためには、早い段階での手続きが有効です。
申請に必要な書類と支援機関の協力体制を知っておく
住民票秘匿措置を申請する際には、DV被害を示す証拠や公的な相談履歴が必要となる場合があります。たとえば、警察への相談履歴、配偶者暴力相談支援センターでの面談記録、保護命令申立ての有無などが判断材料とされます。また、多くの自治体では、申請者が一人で手続きを進めるのが難しい場合、女性相談センターや福祉窓口の職員がサポートしてくれます。こうした支援機関との連携を図りながら、制度の利用を進めていくことで、安心した生活の再構築が可能になります。
制度を利用したあとも「安心の継続」を意識することが大切
制度によって一時的に住所の秘匿が守られたとしても、日常生活の中で情報が漏れる可能性はゼロではありません。たとえば、SNSでの投稿や友人との連絡、学校や職場でのやり取りなど、意図せず居場所が知られてしまうこともあります。そのため、制度を利用した後も、防犯意識を持ち続け、住居のセキュリティ強化や連絡手段の管理など、自らの情報管理を徹底することが重要です。安心して暮らすためには、制度と自己防衛の両輪が必要であることを意識しましょう。
警察・役所・支援団体への相談と動き方
警察は「接触されたら動く場所」ではなく「予防のための相談先」でもある
DV加害者からの接触が続く場合、被害が発生してから通報するというイメージを持たれがちですが、実際には「接触の恐れがある段階」でも警察への相談は可能です。特に、既に保護命令を取得している場合や、過去に被害届・相談履歴がある場合には、状況を把握してくれている警察が迅速に対応してくれる可能性が高まります。また、最寄りの交番や生活安全課に事情を説明すれば、パトロール強化や警告文の送付などの対応を行ってくれることもあります。緊急性があるかどうかに関係なく、「予防のため」の動きとしても、警察を信頼して利用することが大切です。
自治体の相談窓口やDV支援センターも頼れる存在
各自治体では、配偶者暴力相談支援センターをはじめ、女性相談センター、福祉課、子ども家庭支援センターなど、DV関連の相談を受け付ける窓口が整備されています。こうした機関は、法的なアドバイスや一時避難施設の案内、住民票秘匿制度の申請支援など、生活のあらゆる面でサポートを提供してくれます。特に、継続的な支援を必要とする場合には、民間の支援団体と連携して被害者の生活再建を支えてくれることもあります。自分一人で動くのが難しいと感じたときは、まずはこれらの相談窓口に「話すだけ」でも大丈夫です。
相談時に伝えるべきことと、準備しておくと良い情報
警察や自治体に相談する際は、できるだけ具体的な情報をもとに状況を伝えることで、より的確な支援を受けやすくなります。たとえば以下のような情報があると、スムーズに対応が進む可能性が高まります。
- 接触された日時や場所、手段(電話、訪問、SNSなど)
- 加害者の氏名や関係、居場所が分かる範囲での情報
- 以前に被害を受けた履歴や診断書、相談記録などの証拠
- 今現在の不安や恐怖の程度(眠れない、外出できない等)
これらは箇条書きでメモにしておくだけでも構いません。緊張してうまく話せない場合にも備え、情報の整理と記録は日頃から意識しておくと安心です。
子どもがいる場合に注意すべき点と支援制度
子どもを通じた接触に要注意。新たな被害の入口になることも
離婚後も加害者が子どもを介して元配偶者に接触しようとするケースは少なくありません。たとえば、学校の行事に現れる、登下校中に待ち伏せする、連絡帳や荷物を使って伝言を渡すなど、子どもを間接的な「橋渡し役」として利用する行動が見られます。このような接触は、子どもにとっても大きなストレスであり、精神的な影響を残す恐れがあります。加害者が親権を持っていない場合であっても、接触権や面会交流の場を利用して関わろうとすることもあり、十分な警戒と支援が必要です。
面会交流の中止・制限を申し立てることもできる
加害者が子どもとの面会交流を求めた場合でも、それが子どもの福祉を損なうと判断される場合は、家庭裁判所に申し立てて「面会交流の制限」や「中止」を求めることが可能です。DVの履歴や、過去の暴力・支配行為が証明できれば、面会の安全性が確保できないと判断されることもあります。面会を行うとしても、第三者の立ち会いや、指定場所での短時間の実施に限定するなど、条件をつけることで被害の再発を防ぐ対策が取られます。子どもの利益を最優先に考えた措置を求める姿勢が大切です。
学校や保育園にも情報共有をしておくことが安全確保につながる
DV加害者が子どもに接触を図る可能性がある場合には、学校・保育園・学童など、子どもが通う機関にあらかじめ事情を共有しておくことが重要です。たとえば、「この人物が来ても子どもを引き渡さないでください」といった申し出や、学校での連絡手段を限定する取り決めをしておくことで、緊急時にも柔軟な対応が可能になります。情報の共有には勇気が要りますが、教職員や保育士も連携して安全確保に努めてくれる存在です。自分だけで抱え込まず、周囲との協力体制を整えることが、子どもを守る大きな力になります。
日常生活でできる防犯対策と安全確保
住まいや通勤経路など「生活の見直し」が安全の第一歩
DV加害者に住所や生活パターンを知られている場合、思わぬ場所で再接触が起きるリスクがあります。そのため、引っ越しや通勤経路の変更、時間帯のずらしなど、日常生活の中でできる「見直し」は非常に有効です。引っ越しが難しい場合でも、玄関や窓に補助錠を付ける、監視カメラや人感センサーライトを設置することで、安心感が高まります。安全は一度に完全に確保できるものではなく、日々の積み重ねで作られるものです。身近な環境の工夫から始めてみましょう。
SNSやインターネット上の情報発信にも注意が必要
現代では、SNSから住所や行動パターンが特定されてしまうケースが増えています。写真に写り込んだ風景、投稿の時間帯、イベント参加の告知などから、加害者に現在地を特定されるリスクがあります。また、共通の知人を通じて情報が漏れることもあるため、友人・知人に対しても状況を共有し、情報の取り扱いに協力を求めることが大切です。アカウントの公開範囲を制限する、投稿を控える、名前やアイコンを変えるなど、小さな対策の積み重ねが自分と家族の安全につながります。
「予防意識を持ち続けること」が不安の軽減につながる
DV被害から逃れて新しい生活を始めたとしても、心理的な不安が完全になくなるまでには時間がかかるものです。そのため、防犯意識を持ち続けることが精神的な安定にもつながります。「自分が悪いわけではない」「何かあったら相談できる場所がある」と自分に言い聞かせながら、必要に応じて専門のカウンセリングを受けることも選択肢の一つです。不安を抱え続けるのではなく、「備えているから大丈夫」と思える環境づくりこそが、自立した安心な生活の礎となります。
二次被害を防ぐためのメンタルケアと支援活用
DVが与える心の傷は、見えないまま深く残ることがある
身体的な被害が終わっても、DVによって受けた心の傷は長く残りやすく、フラッシュバックや不安感、無力感といった症状が続くこともあります。とくに、加害者からの接触が途絶えた後でも、「またいつか来るのでは」「誰かに見張られているのでは」といった恐怖心から、外出が困難になったり、仕事や子育てに支障が出たりすることがあります。このような精神的影響も、立派な「二次被害」として認識することが重要です。見えない苦しみに蓋をせず、自分の心の回復を優先する姿勢が、再出発への第一歩になります。
カウンセリングや支援団体の力を借りることは「弱さ」ではない
メンタルの不調を感じたとき、カウンセリングや支援団体の利用を「自分はまだ大丈夫」と我慢してしまう人は少なくありません。しかし、自分の気持ちを整理するために専門家の力を借りることは、決して弱さではなく、自立へ向けた前向きな行動です。公的機関や女性支援センター、NPOなどでは、DV被害者に特化した相談員が在籍しており、電話や面談で安心して話ができる環境が整っています。一人で抱え込まず、信頼できる第三者に状況を伝えることで、思いもよらない解決の糸口が見えることもあります。
安心して暮らすには「信頼できる環境づくり」も必要
心のケアは、相談やカウンセリングだけでは完結しません。日常の中に「安心できる場所」や「頼れる人」がいることで、不安を感じにくくなり、前向きな気持ちを取り戻しやすくなります。たとえば、信頼できる親族や友人に状況を共有しておく、必要があれば職場の上司に理解を求める、子どもの学校とも連携を取るなど、自分が孤立しない関係性を築くことが大切です。安心を感じられる環境を少しずつ整えることが、再び自分らしい生活を取り戻す鍵となります。
今後に向けた準備と相談先の見つけ方
「また何かあったときのために」事前の備えをしておく安心感
DV加害者からの接触が一時的に収まったとしても、完全に終わったとは限らず、再び何らかのアクションがある可能性も否定できません。そのため、被害が起きていない段階から、いざというときに備えた準備をしておくことが重要です。たとえば、連絡手段を限定する、訪問された場合の対応手順を家族と共有しておく、緊急時の相談先や避難先の連絡先をまとめておくなど、小さな備えが心の余裕を生み出します。準備をしておくことで、「いつ何があっても大丈夫」と思える精神的な安定につながります。
相談先を複数持っておくと、状況に応じた対応がとりやすい
DVに関する相談は、内容やタイミングによって、適切な機関が異なります。たとえば法的な問題なら弁護士や法テラス、緊急の安全確保なら警察や配偶者暴力相談支援センター、生活支援なら福祉事務所やNPO団体が対応可能です。どこに相談すればよいか迷うこともあるため、あらかじめ複数の相談先をリスト化しておくと安心です。また、各機関の対応内容や受付時間なども事前に確認しておくことで、緊急時に慌てず落ち着いて行動できる準備が整います。
「頼ってもいい相手がいる」という実感が再出発の力になる
DV被害を受けた経験は、自己肯定感を大きく損なうことがあります。「誰にも頼れない」「自分だけが苦しい」と感じることもありますが、実際には多くの人が支援の手を差し伸べようとしています。公的機関や民間支援団体、カウンセラー、理解ある友人など、自分が信頼できる相手とつながっておくことは、将来の生活を支える心の支柱となります。「一人じゃない」という実感が、安心して暮らすための土台となり、自分らしい人生を取り戻す大きな力になります。
「離婚したのに終わらない苦しみ」に終止符を打つために、知識と備えが力になる
離婚によって法的な関係は解消されても、DV加害者からの執着や接触が続くことで、心の平穏が取り戻せない被害者は少なくありません。身体的な暴力がなくても、精神的圧迫や監視、接触の試みが続けば、それは立派な二次被害です。この記事では、接近禁止命令や住民票の秘匿制度など、加害者からの接触を防ぐための法的手段、警察や自治体のサポート、そして心の回復に向けた支援体制を紹介してきました。大切なのは、「これくらいなら大丈夫」と我慢せず、自分と家族の安全・尊厳を守る意識を持つことです。一人で抱え込まず、専門機関や信頼できる人の力を借りながら、自分らしい生活を取り戻していきましょう。備えることで得られる安心感が、未来への一歩を支えてくれます。

この記事の作成者
トラブル調査担当:北野
この記事は、皆様が抱えるトラブルや問題の悩みに寄り添い、解決への一歩を踏み出せるきっかけになればと作成しました。日々の生活の中で困っていることや、不安に感じていることがあれば、当相談室へお気軽にご相談ください。どんな小さなことでも、お力になれれば幸いです。

この記事の監修者
XP法律事務所:今井弁護士
この記事の内容は、法的な観点からも十分に考慮し、適切なアドバイスを提供できるよう監修しております。日々生活をしている中でトラブルや問題ごとはご自身が引き起こさなくても起きてしまうこともあります。正しい知識と対処法は自身を守るためにも必要でしょう。時には専門家の手を借りることも必要になることがあるかもしれません。法的に守られるべき権利を持つ皆様が、安心して生活できるよう、法の専門家としてサポートいたします。

この記事の監修者
心理カウンセラー:大久保
日常の中で起きるトラブルごとや問題は、お金や物だけではなく時に心身に大きな負担をもたらすこともあります。この記事を通じて、少しでも皆様の心の負担を軽くし、前向きな気持ちで生活を送っていただけるように、内容を監修しました。あなたの気持ちを理解し、寄り添うことを大切にしています。困ったことがあれば、どうか一人で悩まず、私たちにご相談ください。心のケアも、私たちの大切な役割です。
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